対談にご協力いただいたのは運動の専門家である日本スポーツ協会 公認アスレティックトレーナー「木下 幸司」さん。
本日は、怪我のリハビリ、慢性疾患、介護、妊婦などその人の健康状態に合わせて運動プログラムを変えていく、最適な運動について教えていただきました。
健康状態に合わせた運動の考え方
今回は目的別の中でも健康状態によってもスタイルが変わってくるという事なのでその辺りをお伺いしたいと思います。
お願いします。
どうでしょう、健康状態で分けていくとどのような分け方・カテゴリーになってくるのでしょうか?
全然健康に問題がない人ももちろんいらっしゃると思いますし、もちろん何か色々な条件で健康的に問題があるという方もいらっしゃると思います。
今日は少し正常ではない状態の方のお話をさせてもらえたらなと思っています。
その中で4つご紹介したいなと思います。
①怪我されている方
まず1つ目は例えば膝が痛いとか腰が痛いとか、何かお怪我されている方のそういう人達への運動ですね。
②慢性疾患がある方
2つ目は慢性疾患。
例えば高血圧とか糖尿病とか内科的な何かご病気がある方のそういう方への運動。
診断が出ているというか、そういう事ですね。
③介護を受けている方
3つ目は少し年配の方。高齢者の方なので介護を受けていらっしゃる方々への運動ですね。
④妊婦さん
4つ目が妊婦さん。出産前だとか妊婦さんへの運動。
このような4つ。正常とはちょっと違う状態の方が運動するという機会になるかなと思います。
はい。
【1】 怪我からのリハビリ -運動の目的-
まずは1つ目の怪我の方ですけど、ポイントとしては3つあるかなと思います。
まず1つ目は当然お怪我されているという所で、何か痛いとか何か骨折して動かせないというような所があると思うんですけれど、そういう所を「患部」と僕たちは言うんですけれども、痛めている場所なんですけれども。
そこに関してはやはり人間の治っていく治癒という過程がゆっくりで、スピードがいきなり戻るわけではないので、回復に時間が多少かかります。
患部については無理は出来ない
まずは怪我で痛めている状態は、やはり無理はできないので、その怪我している部分(患部)に関しては無理はできないんですけれども。
逆にそれ以外の部分、例えば「膝が痛いけれども、じゃあ腹筋元気ですよね」とか。例えば「肩周り・胸周りは元気ですよね」となれば上半身の運動であったりとか、腹筋の運動というのは出来ます。
完全に休んでしまうと体全体が弱くなる
当然どこか痛いから体を休めてしまうと体全体が力が弱くなったりとか体が硬くなったりとかという事になってしまいます。
患部以外をしっかり動かすことが重要である
怪我された所は少しおとなしめでも、それ以外の部分は逆にしっかり動かして衰えないというような内容が大事かなと思います。
怪我した部分は徐々に徐々に良くしていくという形で動かしていくというのが大事かなという所ですね。
骨折とか打ち身だったり、要は動きに制限がかかってる時の回復期という捉え方でいいですかね?
例えば木下さんのいらっしゃるオルソグループの中では、ドクターとリハビリの先生とそしてトレーナーさんと一体になって結構怪我をしていても運動していくというような事を聞いたんですが。
そうですね。
やられていますか?
医師やリハビリスタッフが連携を行いながら実施する
はい。しっかりお医者さんの判断だったり、リハビリのスタッフ、先生達との連携で「ここはしっかり動かしましょう」「ここは少し安静にしておきましょう」というような形で、結局怪我している所はある程度衰えます。
怪我していない所も何もしなかったら衰えます。衰えている所が2つになってしまったら、そこをまた戻していくのはすごい大変な事なので、ここが元気なのでここはそのままに、衰えた所は徐々にリハビリとして戻していきましょう。
という形の順番の方が当然戻していく部分は1箇所だけで済むので、やはりロスがないかなと思うので、そういう意味ではしっかり患部以外のトレーニングを積極的に私達はやっています。
ちゃんと相談しながら回復期ですかね。運動を取り入れていただきたいと思います。
はい。
【1】 怪我からのリハビリ -おすすめの運動-
2つ目のポイントとしては、リハビリ的な運動という形でどういう内容で回復していくか。4つぐらいご紹介します。
①関節の可動域の回復
まず1つ目は可動域ですね。
動きの柔軟性であったり、関節がしっかり動くという所です。
もちろん最初は痛めて動かしにくいので、そこを徐々に徐々に大きく動かしていけるようにストレッチであったり、あとはモビリゼーションというか、動かしながらエクササイズというのをやりながら可動域を回復させていきます。
②筋力の回復
2つ目は筋力ですね。
これもわかりやすいと思いますけれども、動かせないと弱くなっていくのでそこもエクササイズで筋力を戻していきます。
③バランスの回復
3つ目はバランスです。
イメージはバランス感覚で片足出しでグラグラしないとか、
人間は下半身は2本の足で歩くので当然片方を痛めてしまうと痛めていた部分は歩きづらくなったり、逆に足がつけない状態が出てくるかなと思うので、そういう時にはバランスが悪くなって痛みが引いたからといってちゃんと歩けるわけではないので、
しっかり片足でもバランスがとれる内容は下半身の怪我の場合は重要になってくるかなと思います。
怪我が長くて重心というか歩き方が変わっちゃって癖づいちゃって、なかなか戻らないケースとかというのもありますか?
ありますね。
やはり人間の感覚「左右」というのは結構大事な所で怪我すると大体どちらか一方になるので、痛めた方は何か動かしにくい、使いにくいというのが出てくるので、反対側で頑張ってしまって逆に左右のバランスが悪くなる事が多いですね。
④持久力(スタミナ)の回復
4つ目は持久力・スタミナですかね。
やはり人間の活動というのはすぐ終わるわけではなく、例えば通勤するとしても10分・20分歩いて家とか駅へ行くとか、働いている中でも作業が立ち仕事だったら何時間か立ってないといけないタイムラグが出てくるので、当然全く動かせていない所は筋力や柔軟性が落ちるとともに体力・スタミナも落ちてくる。
なので、スタミナというのも回復していかないといけない要素の一つなのかなと思います。
結構大事ですね。
そうですね。
段階的な運動負荷をかけよう
3番目が段階的な運動負荷をという所で痛めている所から徐々に回復していくのは、1段1段の階段を上るように負荷設定であったり、どういうエクササイズをするか。というレベルアップしていくのが凄く大事になります。
いきなりこの状態から飛び級する事は出来ないので、今やっている運動からじゃあ次の段階・次の段階というリハビリ的な運動を教える時には不安な状態にならないようにちょっとずつ自然に自然にしていくというのが凄く心がけていまして、
例えば、小さい子供が自転車に乗るときに最初は後ろを持っているよ~みたいな感じでこぎ始めて、実は持っていないみたいな。知らず知らずに勝手に自転車をこげるようになったみたいな。そういう安心感をお客様に与えながら結果的に気づいたらこんな事も出来ていたという
このようなスムーズな段階・レベルアップが出来るように心がけながら、どういう運動をした方がいいか、どういう負荷、後はどういう声掛けをしたらいいかというのをしっかり意識しながらやっています。
結構その患者さんに合わせて神経を使いますね。
そうですね。
10人いらっしゃったら10人やっぱりその方の運動能力であったり、メンタル面でも違うので、怪我の内容はもちろん違うので同じ怪我でも全然違う内容で苦労する事もありますし、その人を見てどういう指示、提案をしたりというのは凄く考えていますね。
トレーナーさんを見つける時の参考になると思います。
【2】 慢性疾患がある方 -運動の目的-
次 2番目としては慢性疾患ですね。
かかりつけの医師と相談しながら運動を行う
先ほどもお伝えした 糖尿病であったりとか、高血圧あと心疾患・心臓の病気であったりとか、そういう方に対しての運動になりますね。
こちらは当然ある程度病気という形で内科的な疾患という事でやはり僕らだけでは判断できない部分が結構多いので、まずはかかりつけで診てもらっているお医者さんですね。
医師の方にどういう内容を運動として、まずは運動してもいいのかどうか、あとはどういう事をどれぐらいした方がいいのかというのをある程度アドバイスを得た上でそれに基づく、運動処方というのをしながら心がけて指導することが多いですね。
結構お薬を服用されている方とかも場合によっているかもしれないですよね。
そうですね。
【2】 慢性疾患がある方 -おすすめの運動-
有酸素運動が一番必要な運動となる
内容としては有酸素運動ですね。
あまり慢性疾患を抱えている方は激しい運動というのはちょっとしづらい方が多いと思いますので、無酸素運動、例えば重い筋トレをガンガンするとかというよりは、呼吸を整えながら歩くウオーキングであったりとか、やはり自転車漕ぎであったりとか、水中の中でも水泳とか、水中のエクササイズであったりとか
そういう有酸素運動をしっかり呼吸を整えながらある程度の時間をしっかりやって消費エネルギーを使ってあげたりとか、筋肉をしっかり刺激してあげたりとかいうような運動が一番必要な運動かな。とよく指導する事があります。
低負荷の筋力トレーニングも必要となる
もう一つはそれに基づく筋力トレーニングという所で、
運動をする中での必要な筋力というのはあまり激しいものではなくてちょっと知っている低負荷のもので、しっかりそれぞれの筋力を刺激出来るような内容は有酸素運動のベースとしての筋力維持という所では指導しています。
よく夜とか夕方手を振って歩いている年配の女性や男性の方、そういう方がやっていそうなトレーニングですね。
そうですね。
【3】 介護を受けている方 -運動の目的-
3つ目としては年配の方で介護なんかを受けていらっしゃる方ですね。
ある程度自立してなかなか動きにくいというような方も年配の方は出てくるかなと思うんですけれども、そういう方に対してやはり運動という所で、身体面ですね。
肉体面を鍛えて寝たきりの予防
しっかり肉体面を鍛えてあまり最終的に寝たきりになってしまったらどうしてもやっぱり動きづらくなってくると思うので、寝たきりの予防であったりとか
体を使うことによる精神面のリフレッシュ効果
あとは精神面ですね。
やはり運動して体を使うという事は当然 気持ちもすっきりしたいという部分があるので、そういう方にとってもやはり肉体面・精神面という意味では運動というのはすごい大事な内容かなと思います。
【3】 介護を受けている方 -おすすめの運動-
内容としてはトレンチであったりとかウォーキングという事で、先ほどの慢性疾患の所でもあったようにできるだけ緩やかに体をしっかり動かしていただいて筋肉だったりとか、心臓や肺のような心肺機能というのを使っていく。
こういう方は少しバランス能力が低下してくる事が多いので、転倒から骨折してしまって寝たきりというような形の方も出てくるケースが多い世代かなと思いますので
転倒予防のためのバランスを鍛えることも重視する
そういう意味では転倒予防のバランスを鍛えていくような内容を結構重視して入れています。
認知症対策というかいわゆるボケ対策にも運動良いって言われますからそういう結果もありますよね。
はい。そうですね。
【4】 妊婦さん -運動の目的-
産婦人科医からの適切な内容を実施する
最後4つ目は妊婦さんですね。
妊婦さんは当然大事な出産前という所で赤ちゃんお腹にいるという所で自分たちが勝手にというわけには中々いかない方にはなりますけど、診てもらっている産婦人科のお医者さんとしっかり連携し
「どういう時期でどういう運動をどれぐらい」というのをある程度指示を受けた中で適切な内容を指導するという形にはなるかなと思います。
【4】 妊婦さん-おすすめの運動-
内容としてやはり負担が掛けれないので、同じような形でのウオーキングであったり、あとは少し動きづらいようでしたら水のプールの中だと浮力があるので結構体への負担が少なくなります。
そういう中でいろいろ歩いていただいたり、体を動かしてもらうようなものであったり、最近ではヨガとかピラティスがそういう方に対してのエクササイズの柔軟性であったり、体幹筋力というのを良くしていくような内容もあるそうなので、
そういう所に行って指導を受ける、そういう所で予防というのも凄く良いのかなと思います。
結構安定期入ってからかもしれませんけど、体重をあまり増やし過ぎないようにとか、ストレスがかかるケースもあるので、精神的にリフレッシュするという意味合いも含めて取り入れてもらえるといいかもしれませんね。
まとめ
主にこの4種類の状態の方々にはそれぞれまたご提案する内容というか、取り組むべきトレーニングが違うという所ですね。
そうですね。
どうなんでしょうか。木下さんは全部対応できたりするんですか?
頑張ればできます。
基本的には運動のレベルであったり、内容、あとは注意点というのは健常な方だけでなくて何か少しトラブルであったり、何か体に負担を抱えていらっしゃる方への運動というのは当然理解している所ではあるので、無理は全然する事はないと思いますけども、
しっかり適切な内容であったりとか、あとはその怪我の方であったり慢性の方であったり、あと妊婦さんというのはやはりお医者さんがいらっしゃるとは思うのでそことの連携という意味では自分たちも普段から整形外科の先生との連携というのもやっていますし、
もちろん医学的な知識というのが専門的な人に比べたら少ないかもしれないんですけど、そういう所はしっかり守った上で運動の教えるスペシャリストとしてはそういう所の情報を入れた上で適切な対応というのはしっかり提供できるように
自分たちも普段から意識しておりますので、どういう方が来てもしっかりご対応できるようには準備をしております。
ありがとうございます。
怪我をしてしまったり骨折してしまった後の状態の回復だったり・リハビリだったり、あとは健康診断に引っかかってそろそろ改革しなさいと言われて運動を始めるようなケースだったり、
あとは介護の方だったり・妊婦さんですね、そういう少し特殊なケースに関してはちゃんと相談できるお医者さんに確認しつつ、連携できるトレーナーさんとやりとりするのがもしかしたら大事なところかもしれませんね。
全員ではなくて今回 特殊なケースかもしれませんけども、当てはまる方って結構いらっしゃると思いますので1つ参考にしていただけたらななんて思います。
はい。
はい。今日もありがとうございました。
ありがとうございました。
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