対談にご協力いただいたのは睡眠の専門家である「矢野達人」さん。 睡眠コーチとして個人の睡眠指導から法人にて事故防止のための睡眠講習やパフォーマンス向上のための睡眠の指導をされています。
サッカーチームメンバーの睡眠マネジメントを行うプログラムを行い、チームのパフォーマンスアップにも貢献されている先生です。
この対談動画では、そんな睡眠の専門家の知識と経験をもとに冬の快眠法についてご紹介しております。
冬の睡眠は「乾燥」に注意
矢野さん、今日もよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
僕、まだ半袖なんですが、前回の10月のお話で「少しずつ冷えてくる時期」だと伺いましたね。11月になると、本格的に冷え込み始める季節に入っていくかと思います。
こうした時期に気をつけていきたい睡眠ケアのポイントには、どんなことがあるでしょうか?
やはり気温の変化も大きな要素ではありますが、特に11月ごろから寒さと一緒に「乾燥」も気になってきますね。
女性の方は乾燥に敏感な方も多いかと思いますが、あまり気にしない方もいますよね?
そうですね。
僕はあまり気にしていませんが…最近は美容に気を遣う男性も増えてきている感じがしますね。
そうですよね、美容面でね。
でも、睡眠の観点から湿度や乾燥に気を配っている方はまだ少ないように感じます。ただ、実際に寝ている間に空気が乾燥していると、喉が渇いて目が覚めてしまうことがありますよね。
夜中に喉がカラカラになって起きた経験は、皆さんも一度はあるのではないでしょうか?自分の唾液で潤すか、飲み物を取りに行くか、といった感じで。
湿気もよくないという話を、6月や7月にお伺いしましたが、乾燥もやはり睡眠にはよくないんですね。
湿気に関しては、体温調節が難しくなるという問題もありましたけれども、乾燥については、やはり先ほどお話ししたようなことが影響してきますね。
乾燥で体が不快を感じやすい(睡眠の質が下がる)
体が不快を感じやすくなりますね。
ですので、中途覚醒、つまり睡眠の質が下がることが起こりやすくなります。ですから、寝室の湿度はある程度保っておく必要がありますね。
湿度のストライクゾーンは40%~70%
湿度の「ストライクゾーン」としては、最低でも40%、高くても70%までが適切と言われていますが、湿度70%は少しギリギリかなとも思います。
なので、もう少し範囲を絞ると、真ん中の理想的な湿度は50%というところですね。
湿度50%を保つことが大事
まずは、湿度50%を保てているかを確認するために、湿度計を寝室に置いてみましょう。
そこから、自分の寝室の湿度環境をチェックすることから始めるのが良いと思います。
睡眠の質の低下につながる乾燥
そんなに乾燥していると、睡眠が強制的に覚醒させられたり、目が覚めたりすることがあるんですか?
そうですね。
喉がカラカラになって目が覚めるのは、わかりやすい例だと思います。
実際、ハウスダストや空中に浮いている埃は、6時間から7時間かけてゆっくり下に落ちてくると言われています。口を開けて寝ていると、そうした余計なものが入りやすくなり、菌が体内に入ってしまうこともあります。
それに加えて、単純に不快感を感じることも影響しているんですね。
スリープドクター(睡眠外来)の見立て
例えば睡眠のお医者さん「 スリープドクター睡眠外来」というものを掲げている先生たちも
口呼吸か鼻呼吸なのか確認
まず患者さんが口呼吸か鼻呼吸かというところをまず見たりするんですよ。
寝室の温度及び空気管理を確認
また、寝室の湿度や空気環境についてお聞きしたときに、何も管理されていない場合は、まず空気清浄機を置くことをお勧めしています。
そうすると、空気がきれいになり、湿度もちゃんとコントロールできるものを置くだけで、睡眠が劇的に改善されることが実際にありますね。
それほど、睡眠医療の現場でも、口呼吸か鼻呼吸か、温度や湿度、空気環境が重要視されていますね。
口呼吸の危険性
口呼吸はやっぱり寝ている時は特に乾燥しやすい時はよくないですか?
そうですね。なるべく鼻呼吸をすることが大切です。
鼻から吸う酸素量、つまり深く入り込む酸素量は、鼻呼吸の方が入りやすいと言われています。
そのため、睡眠医療の現場でもできるだけ鼻呼吸を推奨されているんですよ。
起きている時も口呼吸になっている可能性が高い
やはり寝ている時に口呼吸になってしまうのってこれは起きている時も口呼吸になっている可能性が高いんですよ。
じゃあ癖になっちゃっている?
そうですね。
口でずっと呼吸している方は、寝ると無意識になってしまい、さらに口呼吸が自然になってしまいます。
でも、起きている時から鼻呼吸を意識しておくことで、寝ている時も鼻呼吸を基本にできたり、口呼吸の影響を軽減したりすることができますね。
ですので、口呼吸が気になる方は、ぜひ起きている時から鼻呼吸を意識してみてくださいね。
口呼吸が癖になっている人の体験談
それが難しい方は、マスクをして寝るとか。
あとは口テープ。
そんなになんですね。
僕も初めて口テープを見たときは、こんなのを貼るの?と思ったんですけれど、実際に睡眠外来を受診するクリニックでは、症状によっては大きな症状がある場合にはCPAPという機器を使ったりします。
軽度だと思ったら、まずは口テープで様子を見てみましょうかということがあるんです。鼻呼吸を無理やり作って、睡眠の質がどう変わるかを確認することもあります。こうした現場でも実際に使われているものなんですよ。
ですので、手軽に試せるので、まずはそれから試してみると良いと思います。ただし、もし苦しく感じるようであれば、マスクをして寝ることも考えてみてくださいね。
そうなんですね、ちょっと呼吸が苦しくなってしまうこともありますね。
そうなんですよ。マスクを鼻の部分で折り曲げて、少し圧をかけるようにすると、鼻で呼吸しやすい状態を作ることができるんです。
そんなに強く圧をかける必要はないですが、なるべく鼻呼吸がしやすくなるように工夫して寝るのも一つの方法ですね。
鼻炎の人はどうしたら良いですか?
これは少し個人的な話になるんですが、僕は小さい頃に鼻炎が結構ひどかったんです。最近は落ち着いてきましたが、夜に鼻が詰まって寝られないことがよくありました。
多分、その時は口を開けて寝ていたと思うんですよ。もし「口を閉じて寝なさい」と言われたら、どうしても難しかったでしょうね。
死んでしまいますよね。
このサイズでやらないと呼吸困難になってしまいそうなぐらい想像しちゃいます。
そうですね。
寝苦しさが続いて日中のパフォーマンスが低いとなると、健康に悪影響を及ぼすリスクが出てきますから、そういう方が睡眠外来に行った場合、まず「鼻を治しましょう」というシンプルなお話になることが多いです。
そうなんですね。
鼻から治しましょうということになります。
実際、睡眠外来は内科の先生が運営している場合や、耳鼻科の先生が担当していることもあります。また、小児科の先生が小児の睡眠外来を行っていることもあるんですよ。
耳鼻科を専門にしている先生がいる睡眠外来に行くと、すぐに見極めてもらえると思います。そこで、「まずは鼻を治しなさい」といった話が進むと思いますね。
そうなんですね。
ちょうど11月や12月になると、風邪やインフルエンザが流行り始めますよね。やはり、寝ている間に口腔が乾燥してしまって埃や菌の着地先になっているということですね。
そうですね。
乾燥、口呼吸の目安は?
朝起きたときに口がカラカラになっていたり、夜寝ている間に気づく場合は、たぶん自分が口呼吸をしていることがわかると思うんですけど、どのような方が室内を加湿したり、口呼吸にならないように対策をすると良いのでしょうか?
湿度計で確認する
さっきお話ししたように、湿度計があればぱっと見でわかるのですが、大半のご家庭にはないと思います。
夜中や朝起きたときの喉の乾燥状態を確認する
やはり一番わかりやすいのは、夜中や朝起きたときに自分の喉がどれくらい乾燥しているかで判断することだと思います。
そこまで気にならない方でも、実際に脳波を測ればわかることですが、結構目覚めていることが多いんです。実際には、自分が不快に感じて一瞬目を覚まし、唾液で潤してまた眠りに入るということを繰り返しています。
ただ、そのことを覚えていないだけで、その後すぐに寝ちゃうので、そうした時間があったことを振り返ることは基本的にあまりしないと思います。
「昨日の睡眠はどうでしたか?」と聞かれると、「そういえば、喉が渇いて目が覚めたかもしれない」と、うっすらした記憶がある方が多いです。
大体、2、3度夜中に目が覚めてもおかしくないので、軽症だと自分で思っている方でも、ちょっとした自覚があれば、夜中もそうなっているかもしれないと念には念を入れておくことが大切だと思います。
ありがとうございます。
動きが特殊な動きをしてそうだったら、よくある睡眠アプリみたいなのものでも
ちょっと試してみるというのもありなんでしょうか?
録音アプリで寝ている状態を確認する
そうですね。
脳波は脳にペタペタとセンサーをつけないと測れないので、測定アプリではそこまでわからないので、どちらかというと、録音アプリの方がいいかもしれませんね。
「結構むせてるな」と自分で気づくこともあるかもしれません。
なるほど。
結構「ゴホゴホ言ってるな」と気づいたら、それは喉の乾燥が影響しているかもしれませんね。夜中にむせた気がするという経験も実際にあると思います。
そういったことを録音や録画で確認するのは、わかりやすい方法かもしれませんね。
いびきも同時にわかりますし。
まとめ
ですので、本当に寝室の空気環境を見直すことが大切です。温度や湿度をチェックし、自分の口呼吸や鼻呼吸にも目を向けてみてください。
必要に応じて補助アイテムを使ったり、根本的には鼻炎や副鼻腔炎、蓄膿症などがある場合、まずはその鼻を治すことが大切です。
睡眠と鼻の関係を考えていない方もいらっしゃるかもしれませんが、実はそこが直結しているんですよね。
もし睡眠に悩んでいるのであれば、この機会に長年苦しんでいた鼻の問題をちゃんと治そうと思ってもらえるといいですね。
ありがとうございます。
これからの時期、特に冷えが出てくるときや乾燥が進むときは、乾燥対策と鼻呼吸でしっかり寝られる習慣を身につけることがポイントになりそうですね。
だと思います。
はい、わかりました。
どうしても苦しい場合は、やはりお医者さんに診てもらう方がいいかなと思いますので、一つのアイデアとして参考にしていただければと思います。
今回もありがとうございました。
ありがとうございました。